大人になる
相良ゆう

大人は許されている
お酒もタバコも夜更かしも

子どもは許されていない
お酒もタバコも夜更かしも



大人は許されていることを知っている
だから大人は節度を守る

子どもは許されていないことを知らない
だからいつでも制限される



大人は自由の意味を知っている
それは
束縛されていないことではなく
制限されていないことでもなく
限界がないということでもなく
それらの中で得られるものだということを


子どもは自由の意味を知らない
彼らは
束縛されたことがなく
制限されたこともなく
限界があるなどとは信じない
それは混沌であることも知らない


大人は社交辞令を尊ぶ
それが年齢や世代や生活環境を超えて
人間関係を維持するために大切な
コミュニケーションの手段であることを知っている

子どもは社交辞令を嫌う
まだ使い方をよく知らなくて
鵜呑みにして恥をかいたり傷ついたり
心にもないことを言うなと不快に思ったりする



大人は許されている
許されるだけの責任を果たしている
それだけの信頼を得るほどに
日々働いている


子どもは許されていない
大人は子どもに責任を負わせない
責任を知らない子どもは
信頼を知ることもない
それはこれから少しずつ
社会の中で学んでいくべきこと


大人は子どもを見守る
子どもが大人になるために
子どもからは見えないところから
ちゃんといつも見守っている

子どもは大人に甘える
欲しいものをねだるように
意図的に甘えていることも
まるで空気を吸うように
無意識に甘えていることも
なにも分からずに甘える


いつか子どもの目から見て
不自然だとか 不条理だとか
そんな見えない壁にぶつかったら
それが大人の世界の入り口
混沌で自由だと思っていた世界から
秩序ある制限された自由のある世界へ


さあ こっちへおいで
人の営みの明日を担う 未来の大人たち
君たちの未来は明るくはないかもしれない
今だってこれからだって問題は常に山積みだろう
けれど人の歴史と伝統への尊敬と
その中に生きるものとしての自覚と実感が
暗い未来に向かって凛と進む
闇を貫く眩い閃光であることを知るだろう
それだけでお天道様に顔を向けてまっすぐに
誇りを持って生きてゆけるものなのだよ


大人になりたまえ


大人はいろいろなことを許してくれるよ
彼らは許されてきたことを知っているから
だからいろいろなことを受け入れて
絶望に負けずに生きていける


自由詩 大人になる Copyright 相良ゆう 2008-06-16 22:55:28
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