食す時には思わない
doon


 プランターに大根が育つ
 セッセと蟻のように虫を爪弾きした成果だ
 その蟻も我が物顔でプランターに通う
 家に入れば味噌汁が待っている
 買ってきた大根の味噌汁
 母が汗水たらして買ってきた百円の具

 プランターから抜く
 親指ほどの長さの株みたいな大根
 値打ちのない大根
 どうでもいいことだが、買ってくれる人はいない
 家の中では
 大根の漬物がある
 私は飯を腹いっぱい食った

 取れたての大根を差し出し
 摩り下ろしてしまおうと母は言った
 使い道もない大根

 一本作ることもできないで
 私は大根を腹いっぱい食ったのだ
 バカみたいに 声色をあげて
 泥だらけで大根を握った
 百円を握ることさえ
 土塗れの私は出来なかった


自由詩 食す時には思わない Copyright doon 2008-06-16 02:56:00
notebook Home 戻る