「ひつうち」
ソティロ

「ひつうち」



午前二時三十九分、
携帯電話が鳴った
たまたま傍にいたので
素早く出ようとした
それより前に電話は切れた
着信履歴には
音声不在着信/非通知設定
と表示されていた
ぼくはそこに居た


ぼんやりと記憶の糸を辿って
誰からの電話か想像してみた
丑三つ時の空気は停滞していた
が、その分何か伝達しやすいものを含んでいた
見当もつかないけど何か大事な用件
のような気がしてならなかった


何を伝えたかったのだろう
思い直してやめたのか
電波状況で切れたのか
もしくはもう既にこれが
メッセージ、なのか
少なくともその人は
自分であると主張しないことを
たぶん選んだんだと思う










午前四時半、外には光の感じが現れる
空気が拡充して夜の媒介は放散される
ぼくのなかの罪の意識、それが
どこから来たものか、持ち併せていたものなのか
とにかくそれはぼくの深くに沈殿して
流れ出すものとの層を分ける
午前五時、
カーテンの隙間から差し込んだ白い光が
部屋の中を薄く照らしだす
ぼくは重いまぶたを少しだけ閉じている
トゥーレイト、トゥーレイト
ぼくはいつも間に合わない
うつくしい、新しい一日があふれ出している










自由詩 「ひつうち」 Copyright ソティロ 2008-06-16 02:39:50
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