「ひつうち」
ソティロ
「ひつうち」
午前二時三十九分、
携帯電話が鳴った
たまたま傍にいたので
素早く出ようとした
それより前に電話は切れた
着信履歴には
音声不在着信/非通知設定
と表示されていた
ぼくはそこに居た
ぼんやりと記憶の糸を辿って
誰からの電話か想像してみた
丑三つ時の空気は停滞していた
が、その分何か伝達しやすいものを含んでいた
見当もつかないけど何か大事な用件
のような気がしてならなかった
何を伝えたかったのだろう
思い直してやめたのか
電波状況で切れたのか
もしくはもう既にこれが
メッセージ、なのか
少なくともその人は
自分であると主張しないことを
たぶん選んだんだと思う
午前四時半、外には光の感じが現れる
空気が拡充して夜の媒介は放散される
ぼくのなかの罪の意識、それが
どこから来たものか、持ち併せていたものなのか
とにかくそれはぼくの深くに沈殿して
流れ出すものとの層を分ける
午前五時、
カーテンの隙間から差し込んだ白い光が
部屋の中を薄く照らしだす
ぼくは重いまぶたを少しだけ閉じている
トゥーレイト、トゥーレイト
ぼくはいつも間に合わない
うつくしい、新しい一日があふれ出している