P-51
つぐこ

Sは、たった0.1グラムの薬を飲んだ。
ソクラテスが口に入れた薬って甘いんだろうね、って言葉を思い出した、
シラフじゃなかったからという理由で、冗談と片付けた、
しかし、Sはたった0.1グラムの薬を飲んだ。

Sが飲んだ薬はP-51、覚醒剤ではない。
Sは恋人に言う、
「俺は、平和主義者だ」と。
Sは溺れていた、何かに、
何か分からないから、薬を、P−51を飲んだ。

Sは幻覚を見た。
金色の羽を持つ、鳥を見た、
Sは羽がほしくて手を伸ばした、
鳥はどこかに飛んでいき、撃たれた。
Sにはそう見えた。

悲しくなれば、薬を飲んだ、P−51を。
Sは笑う、笑う、笑う。
恋人は悲鳴をあげる、
Sは全て分かっていた、
何も必要ないと、
ウェイトレスは悲鳴をあげる。
Sは分かった、
血塗られた幸せなんて、どこにもありはしないって。

そして、願った。
薬で神経がおかしくなっていき、気を失った、
何を願ったのかは、Sしか知らない、
Sが飲んだ薬は、P-51。
甘い毒だったと、Sから聞いた。



自由詩  P-51 Copyright つぐこ 2008-06-15 15:35:28
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