自然薯の太る季節
あおば

                080614



早朝
練習している間に
引き抜かれた
自然薯
生のままで囓られる
ガジガジ

蜘蛛の巣
聖徳太子の真似をして
ヘッドフォーンを耳に
山道を行く
閉じたケータイからは
兄貴の呼ぶ声
午前中は鼻歌を唄い
午後からは謡を習う
暗くなってからは
カラオケを探し
五線譜を張り巡らす

旗日
小さな里山を眺め
開発し尽くされた古里を思うとき
ニイタカヤマノボレの暗号キーを
鉛筆を握ったままの
人差し指で叩いている

邂逅
大震災の様相を示す栗原市郊外の映像
単行電車の走る音は絶え間なく
削り落とされた山肌に露出する耳鳴りに
自然薯の太る季節を待ち望む


自由詩 自然薯の太る季節 Copyright あおば 2008-06-14 21:06:29
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