ひとつ まよう
木立 悟





まだらな午後の嗚咽を受け
震える水の膜の指
またどこかへ連れ去られ
またどこかに立ちつくす


ゆうるりと巡る音がある
出口を持たない入口がある
飾られすぎた光を燃して
扉はまぶしくひらかれる


雨のなか散る花
騒がしい屋根色
空おおう祭の
静かなはじまり


昨夜の汗 置き去り
ひとつ点る その羽
閉ざす先 脈うち
縮む音 非の花


既に起きてしまったことが
さらにかたちづくられてゆく
波を集める手によって
ただ触れようとする手によって


音が音を呼び
空は近い
足の裏にだけ見える道
暗い水をすぎる唱


野の外へ 野の外へ
鉄は響き 鉄は翳る
声は重なり まぶしくこぼれ
指のはざまを鳴らしつづける



















自由詩 ひとつ まよう Copyright 木立 悟 2008-06-14 18:03:13
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