青い目薬
麻生ゆり

悩みがある
他の人には大したことなくても
僕にはおおごとだ

そんなとき彼女が言った
「絆創膏ならあるよ?」
「バンソーコー?」
「傷が隠せるよ」
「治らないの?」
「うん。
 だって治せるのは
 最終的には自分だけなんだもん。
 だから隠せるだけ。
 しかもへたすると
 かえって傷が化膿しちゃうかも」
僕は絆創膏を拒否した

次に彼女は言った
「じゃあ目薬はどう?」
「メグスリ?」
「つけるとものの見方が変わるよ」
「別の角度から物事が見られるってこと?」
「うん。
 傷は治らないけど、
 すーっとしてすっきりするよ」
僕は少しためらったが
結局目薬を受け取った

そして僕は
空を見上げて目薬をさしてみた
空の青さが
いっせいに目の中に広がってゆく…
それは
限りなく綺麗な光景だった
深いふかーい水色が
幾重にも重なって
何とも言えない美しさをかもしだしている…
こんなにも
青空が綺麗なものだと感じたのは
初めてだった
今にも散ってしまいそうな
薄い雲の間から見える青空が
僕をとらえて放さない…
僕は
羊水の中を漂っているかのような
安心感に包まれていた…

そして気がつくと
僕はすっかり悩みごとを
忘れてしまっていた
きっと
些細なものだったのだろう、と
僕は思った


自由詩 青い目薬 Copyright 麻生ゆり 2008-06-14 02:11:19
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