仮面ライダー
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場末のバーで仮面を外す
背中のジッパーつまんで下ろす
皮膚に新鮮な空気が当たる
嫌なことだってあらぁな
今日も日の出と共に家を出て
さっきまで怪人と戦っていたんだ
けどもうすぐ給金だよ
イエローローズオブテキサス
ツケにしといてくれないか
好きでポーズしている訳じゃねぇ
こっちも色々大変さ
ともだちが
小学校一緒に通った友達が
借金抱えて行方不明になってよう
何を思ったか全身タイツの一員さぁ
高校じゃどこまで遠くバイク飛ばせるか
浅間レースの話になると
ついつい熱くなっちまう
語ったことばがお互い人間だった頃の
あの時のアイツにはまだあった
最後の夢になっちまってよう

どうしてこんなことになっちまったんだろうなぁ
何が正義で何が悪かなんて誰が決めてくれるんだ
いつもなら気にもかけない
下っ端の末期の息が
語りきやがってよう
気になってマスクひっぺがしたら
元気かって
人相も変わってやがったから
最初分かんなかったんだぜぇ
けれど口を片方歪めて目尻をぐっと下げる
笑顔で思い出したんだ
これが飲まずにいられるかってんだ
トノサマバッタの脚力で
思いきり蹴り上げた下ッ腹がやぶれて腸が
はみ出たアイツを支えて言ったんだ
俺は元気だぜ
アイツはまたにこりして
(キィ)
幽かに呟いて逝っちまったよぉ
随分と会ってなかったけれど
忘れたことなんてなかったぜぇ
ずっと友達だったんだぁ今でも

ねぇ、マスター
人と虫を行き来する定めってナンだろうなぁ
バッタ屋だって真面目に人生演じているのに
俺はいつでもはぐれ虫さぁ
赤をなくして
緑にされた血で見る景色は凄ぇ穏やかで
バッタ物と言われてもこの複眼に映る空には
今も大陸の渉る風が吹いてるんだぜぇ
怪人を退治した後は近所の公園に寝ころんで
草を噛む時は気をつけながら
誰にも口の動きを見せないように背中丸める
あしたもきっと今日と似た一日だけど
だから全く違う一日とも言えるんだろうなぁ
朝イチでデパート屋上の営業だよ
早く梅雨が明けねぇかなぁ
虫にも人にもいつも空はでっかくて
ガソリンもすっかり高くなっちまったけれど
マスターは相変わらずパイプなんだねぇ
オールドパルおごらせてくれねぇか
どうせ客もこねぇだろうし看板しまって
やっと人に戻れたアイツのために
真っ赤に冷えた酒でも飲もうや






自由詩 仮面ライダー Copyright soft_machine 2008-06-12 17:16:07
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