罪と罰
プル式

人さらいは恋をした
ころころとよく笑う少女だった
人さらいは少女をさらい
自分の家に閉じ込めた
他に愛し方をしらなかった
人さらいも同じ様に育てられたから

その日から少女は笑わなくなった
人さらいはあれやこれやと
少女の欲しがりそうな物を探しては
与え続けた
しかし少女は悲しそうに
人さらいを見つめるだけだった
そうして幾年かが過ぎた頃
人さらいは少女に
何か欲しいものは無いか訪ねた
少女は毛糸と編み棒を欲した
人さらいはそれがうれしく
すぐに買い与えた
少女は人さらいに毛糸の帽子を編んだ
大き過ぎたそれは
人さらいの顔を包める程だったが
人さらいはうれしかった
そうして毎日被り続けた

ある雨の夜家に帰ると
人さらいの後ろから少女が抱き付いた
人さらいはどうしていいのか解らず
ただ立ちつくした
少女は人さらいの帽子を掴むと
ぐっと引き下げた
雨に濡れたそれは
人さらいの顔に張り付いた
少女は編み棒を握りしめると
ただ人さらいに突き立てた

法廷で少女は笑っていた
人さらいとの生活の中で
少女は何かが壊れていた
少女は罪は軽いが有罪となった
判決を聞くと少女は命を絶った
死んでしまった少女から
赤い塊が流れ堕ちた。


自由詩 罪と罰 Copyright プル式 2008-06-11 11:48:07
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