「ストリッパー (3)」
ベンジャミン

あたしが一枚ずつ脱ぎ捨てるたび
視線があつまるのはわかってる
そうやってあたしはお金をかせぐし
そうやってお客は悦びを得るのだから
ギブアンドテイクってやつでしょ

あたしがステージの上で
本当はバカヤローって呟いてても
きっと誰も気づかないし責めたりしない
それはあたしに許された悦びだから
キブアンドテイクって

ねぇ ちょっと聞いてもいい?
あたし本当はウタがうまいんだよ
それをここで歌ってみてもいいかなぁ
うまいっていってもカラオケで90点くらい
新しいウタは知らないからナツメロだよ

ねぇ ちょっと聞いてもいい?
ちょっとだけでいいんですちょっとだけ
ステージに座りこんだあたしが
いきなり立って歌ったら聞いてくれるかなぁ

きっとみんな知ってる古いウタ
はやりのウタじゃなくて童謡みたいなの
胸の前で指を組んで目を閉じて歌うの
だれもが無邪気だった頃に
みんなで一緒になって歌えたようなウタ

ステージと観客席みたいな隔たりもなく
土の匂いのする公園の広場でさぁ
輪になって手をつないでいられた頃の
いじめっ子といじめられっ子がいても
みんな同じ土の匂いと青草の匂いがした

きっとみんなが不思議だらけの現実の中
リアルにあこがれていられたときが
たしかにあった気がするんだよね
バカヤローって言葉が
あいさつ代わりだったよね

あたしが脱ぎ捨てたのは
きらびやかなランジェリーじゃなくて
無邪気でいられた頃の土の匂い
輪になって手をつないでいられた頃の
原っぱの緑がだんだんとぼやけてくよ

ねぇ ちょっと聞いてもいいかなぁ
あの頃のウタ

覚えてる?って

あたしがいきなり泣き出しても
誰かやさしい言葉

ひとことでも言ってくれるかなぁ



自由詩 「ストリッパー (3)」 Copyright ベンジャミン 2008-06-11 02:54:19
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