月と風見鶏
プル式

おやめなさい
月はあなたに何も教えてはくれません
おやめなさい
風見鶏はあなたに何も教えてはくれません
おやめなさい。

だから
こうして私はこうして月をながめる
だから
こうして私は空を見上げる
だからこうして。

ある赤い月夜の晩に
幼い記憶を頼りに歩く
中年の男がいた

男はその静かな夜に
自転車を漕ぎ家路を急いだ
イヤフォーンの中では男の好きな
どこかの国の男が切なげな
ピアノに合わせて歌を歌っていた

男は月を見て「赤い月だ」とつぶやき
赤い月の中で静かに流れる
どこかの国の男の歌声に耳を傾ける

男は願う
何かを

そうして月夜は静かに更けて行く

帰り道の誰かの家の上で
風見鶏がカラカラと回った。


自由詩 月と風見鶏 Copyright プル式 2008-06-10 00:51:02
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