かなしい、かなしい
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かなしい
かなしい
と思っていると
なにをかなしいと思っていたのか
わからなくなってしまった
返事を期待しないきみのなまえを
部屋のそこここに置き散らかしたまま
膝をかかえて座る午後
思い出すきみのからだ
粘膜に触れると
「ああ、生き物なのだ」と感じさせるんだったなあ
そういえば
ウミガメの産卵
樹液
生まれたばかりの子馬
それから、SF映画に出てくるエイリアンの肌も
みんなてらてらと光っていて
しっとりとあたたかく見えるので
ぞっとして
そして、安心する
「死」にとうとう出会ってしまったきもちになる
大好きな人に食べられているきもちになる
きみを失ったくらいじゃこわれないぼくのからだは
どうしようもなく生き物で、
残念だな
とっても
どうして食べてくれなかったの
どうして
ぼくはもう何がかなしいのかわからないよ
心配しなくてもきみのことなんて
いつかきっとわすれちゃうんだよぼくは
生きているからきっとわすれちゃう
かなしい
かなしい
だけど何がかなしいのかわからない
いまは、それが、かなしい