せん
れつら

きりつめてしまえば
ボウルにいっぱいなのだった
歩んできた家路は
ずっといっぽんみちだったのに
思い出す道草の
切れ端で指を傷める

なんども振り返っては
細々と撒いてきたパン屑を確かめながら
手に残ったひとかけの糧を
食べるか
砕いて、また、歩くか
まぶたの裏でめだまをくるくるさしているあいだに
また粉々にしてしまっているから
こぼさないように、歩く
こぼさないように歩くとすこし漏れ落ちるから
ちょうどいいのだ
それくらいで

森を抜けると細く雨
数すくない目印が土にかえり
もう、戻れないんじゃないかと膝が鳴る
その音は通り過ぎた道に跳ね木々にこだまし
ふりかえるといっぽんみち
視界は滞りながら
打ちあつめたてんをせんにするように
のうみその筋をひとふでで描く

かえったら
食べものをそまつにしたらだめ
って
言われるから、ぜったい
わかってるよ
たらたらと足先を滴らせながら
川のほとりにまたちいさな川をつくって
もう帰れないと思うところまでいこうと思う
いつのまにか霧
こなごなになったせんを空にまいて、視界
血は止まって、
いや、
蒸散したんだな
だってほら

ちへいせん
くるむように、あかい空






自由詩 せん Copyright れつら 2008-06-09 20:48:09
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