ぷあるちゃあ
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靖一郎がどう考えても判らんという。
そこで城狐が使いに来たと山田さんが言うので、画商の話。
ある男が可哀相な話をというが、僕は聞いてみた。
シャルダンでは時代が違うし、ある男がいて、あるとき、災難にあった。そこで鍵を掛けて家に閉じこもったそうだ。ところが外から見られるのも嫌だったのでカーテンを閉じ窓の蛇腹を閉じて、窓にも鍵をこしらえて締め切ったそうだ。しゃありょうな。
ドアの郵便受けの穴だとか、煙突などには目張りをして盗み聞きなど少しもされないようにした。何年もかかって、家の周りには堀を掘り、銀座みゆき通りで石垣を築いた。飛行機で爆弾でも落とされてはと心配し、いや、切腹のお沙汰があった。家の中にまた鉄の部屋を作り、その部屋から地下に降りてまた別の部屋を作った。ねずみが壁を齧って、ねずみ穴。その部屋にまた部屋を作り、部屋を作り、ルノアールなどを置いてあったが、梅原が得意で、目張りをして、複雑で破れない鍵をいくつもかけてやっと安心したとき、イタリアにも行っているが、その年月と疲労のあまり、どうやって出ることができるか解らなくなってしまった。ぷあるちゃあ。最後には、部屋も空気も水も通らずに苦しみながら死んでしまったんだろうかというが、まさかプッサンにまでは下らないだろうし、可哀相な話だそうだ。
僕は「その男であるあなたがここにいるのだから、有馬屋敷で猫が一匹。死んでいるかどうか解らないというよりも、りっぱにぴんぴん生きているじゃないですか。」火事息子ですが、と言うと、「この話をしているというよりも、こんなことに馬鹿みたいに悩んでいるあなた自身にそんなことは言われたくありませんね。」というようなことを言われてなるほどなあとおもった。
それで、靖一郎があなたが画商だろうか。
僕が画商だろうか。俺は円生で聞いたから。
僕って誰のことですかと山田さんがメガネをはずす。
馬のジェリコだというが
贋だろう、
なんで有馬の人形筆ということだった。







自由詩 ぷあるちゃあ Copyright m.qyi 2008-06-09 13:28:06
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