冗談よりたちの悪い若気の至り
相良ゆう




病気の身体で生きていてもしかたないよ
さっさと死んで生まれ変わってさ
今度は五体満足な身体で生きたいね


輪廻転生論を都合のいいように考える君は
よくそんなことを言いながら笑っていた
本当に自分勝手な発言で
わたしを落ち込ませるけれど
そんな君は健康なわたしよりも
ずっと人生を楽しんでいるように見えるわ

















そんな冗談ばかり言ってないで
残される方の身にもなってよ
もしあなたがさっさと死んでしまったら
わたしはどうすればいいの
さっさと追いかけて自殺でもしようか



下らなくて愚かな冗談半分の本音を
100パーセントの冗談で返してくれる君のやさしさが
たまらなく心残りなんだ
お願いだからそんなにやさしくしないでおくれ
これ以上 恐怖を煽らないでおくれ
今だって本当は耐えるので精一杯なんだ












わかってないなぁ
いいかい 苦しみは伝染するんだぜ
しかも思いもよらない形で
一番避けたい人のところに行くように
運命付けられているんだ
自分だけが苦しんですむのなら
本当はそれが一番なんだよ




わかってないのはどっちだか
苦しみはおなじ苦しみをもってしか
分かり合えないものなのに
でもあなたのその不器用なやさしさは
心地よくて好きよ












はいはい わかりました
じゃあ あなたにはたった今から
一人で苦しみを背負って
いさぎよく死んでもらいましょ
そしてすぐに生まれ変わって
苦しみのない状態で
わたしとともに生きるのよ




まいった まいった 降参だ
どこまでも我侭なんだな君は
でもきっと君に出会えたことで
病に嘆いていた自分は
とっくに死んでしまったよ

君の減らない口から出る言葉で
生かされている気さえする

仰せのままに
すべて君にゆだねよう








ただの風邪でも
これくらい盛り上がりたい


自由詩 冗談よりたちの悪い若気の至り Copyright 相良ゆう 2008-06-06 19:27:44
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