緑の雨
石瀬琳々
あなたは泣いています
あなたは泣いています
緑の雨にずぶ濡れて
ただただこの世がいとしいと
あなたの頭上に垂れ下がる
電線の雫がぽとりと落ちて
ひとつひとつが世界を映してる
あなたの泣き顔も
あなたの目からこぼれる痛みも
まるで緑の葉に垂れ下がる
この世界は蜘蛛の巣のようです
あなたも何かに引っかかり
雫を浴びてきらきら光っています
例えそれがかなしみでも
例えば一瞬にして
通り過ぎる出来事だったとしても
雨が上がれば蜘蛛の巣は
また緑の葉に隠れてしまうでしょう
雨があがればあなたもまた
見知らぬ雑踏の一人です
雨が上がれば頭上の電線も
高い空に走ってゆくだけの
駆け出す思いに立ち止まり
あなたは今見上げてる
あなたのもとに落ちてくる
たくさんの泣き顔と
たくさんの痛みを受け止めて
あなたは泣いています
緑の雨にずぶ濡れて
ただただこの世がかなしいと
ただただこの世がいとしいと
この文書は以下の文書グループに登録されています。
緑の詩集