陰のひと
山中 烏流
満ち満ちる
そうして、あなたは
ほの暗さと等しく
すぐ先のことを知る
生温さを聞くのなら
灰色は
多分、味方なのだと
そう言って
私はいつもより
透明に、なった
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針金は戻らない
あるいは
つぎはぎされた糸目が
それを許さない
これは
いつもより、凪いだあとの話
手折った何かの下で
あなた、が
笑っている
これは
いつもより、凪いだあとの
私、もまた
笑っている
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小さな声は
窓際を装う色で
頬の横を過ぎる
呟いたそのひと
その輪郭は
どこか、私に似ていた
(耳たぶが痺れるように
醒める、
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くるくるまわす
みずたまりがとぶ
なきがおをうつす
あおぞらにさく
うちおとさないで、と
いのりながら
くるくるまわる
ひとりごとのせなか
なきごえをとばす
にじのみそら
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爪の音がした
一度弾いてから
擦り合わせて
それから、そして
そして
あなたの指先は
水滴のように、冷たい
私のはというと
これもまた、等しく
冷たかった
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繋いでいたいのは
温かいものと
鮮やかなもので
それはきっと
あなたでは、なくて