百物語
北村 守通

影が一人増えた


灯された
蝋燭が役目を終え
また
一人影が増えた


重い空気が
脂汗を誘う
冷たい空気の下では
音の伝導率も高い

影が座り込む
行儀よく
影が笑う
笑いかける

席を譲りあいながら
意外にも
気を使いあいながら
影は増える
一人
また一人と
下がってゆく室温と共に


振り向かぬ方がよい
目を合わさぬ方がよい



夜明けは近い
夜明けは近いはずだ


自由詩 百物語 Copyright 北村 守通 2008-06-04 03:26:54
notebook Home