『メリー・ゴー・ラウンド』
東雲 李葉
夕暮れ時 太陽の沈む音
二度と戻れぬ今日の日に「またね」と声をかける子ら
薄明かり 絵画のような雲の色
ひとりふたりと木馬に乗って帰っていく
どうしてこうも世界は緩やかに
まるで明日の訪れを拒むように
彼方に見える人影が誰のものか分からない
黄昏時 家路に着いた烏の群れ
恋しくて淋しくて同じ言葉を繰り返す
町灯り ひとつふたつ蛍のように
ふと 頭上を見上げれば廻り巡る星の夜
どうしてこうも時代は速く
瞬きの間に変わってしまう
彼方に見える人影はこちらに向かって両手を振る
その光が僕らを照らす時 光源はすでに無きものだという
闇夜が僕らを包む時 太陽は別の誰かを照らしている
だけどこうも希望は遠く
指先が触れることもままならない
彼方に見えた人影は母待つ家を見つけただろうか
夜半時 夢の中でもその手を探す
遊び疲れて眠る子を優しく見守る眼差しよ
町灯り ひとつふたつ目を閉じる
名もない星の宿命を誰が嘆いてくれるだろう
だけどどうして夜は短く
輝く時は刹那にも似て
ああそうだきっとあれは昔の僕だ
有明け時 星は夜へと引き返す
時計周りの馬達が朝日とともに嘶いて
月明かり 薄まる影と眠ったら
今日を告げるファンファーレが光の町にこだまする
幸福を廻る騎手達よ
木馬にまたがる子供らよ
どうか今日も安らかに
昨日の僕を遠ざけながら世界は廻り 廻り 巡る