空の絹糸 
服部 剛

川崎LAZONA5階 
木のベンチに腰を下ろした僕は 
各階に店の並ぶ円形広場を眺める 

小さく見える人々の
行き交う傍らで 
ステージに立つ 
君の唄声を聴いていた 

君の息子の「ヘンリー王子」に捧ぐ 
「060131」という
誕生日の唄 


 このよにひそむ 
 カナシミ痛み 
 手ですくって 
 明日の空にかかげる人に 
 なってゆくんだ 


ステージの上で唄う君を 
人垣の間から 
携帯のカメラを構える 
「ヘンリー王子」が 
シャッターを押した 

夏風は5階に吹き渡り 
思わず僕は 
円形の空を仰いだ 

君の唄声が響いてゆく 
真青な空に 
いくすじも雲の絹糸は放たれ 

太陽を映す人工池で遊ぶ 
子供達はステージへと走り出し 
唄いながらしゃがんだ君は 
幾人もの小さい手を 
一人ずつ握った 

5階から見ていた僕は 
唄い終えた君に 
音の無い拍手を 
いつまでも贈っていた 





  ※ 文中の歌詞は「 LOVE TODAY 」Taja(studio oafu)の 
   「060131」という歌より引用しました。 








自由詩 空の絹糸  Copyright 服部 剛 2008-06-02 00:54:25
notebook Home 戻る