父の日
N.K.
父の日は毎年やって来る。
梅雨のこの時期には気分も じめじめとしてしまって
シャツでも送ろうと思っても
淹れたコーヒーをかき混ぜながら
サイズが分からないとひとりごちて
照れくささで熱くなった胸も冷まして
この頃は何も送らずに済ませてしまう。
梅雨のこの時期には毎年のことだが
厚く覆いかぶさる雲を誰もかき混ぜようとはしない。
今年も父の日がやってくることは分かっている。
が
自分が父親になってこの日を迎えるとは考えたことがなかった。
ぐるりと一掻き
タンブラーの中は知らず知らずに掻き混ぜられていたのだ。
自分が抱いているこの子も自分の腕の中でばたばたと回って
もう父親の腕の中から逃れようとする。
この子には父の日が毎年来ることなんてまだ分からないのに
娘よ、この時期のあの分厚い雲にスプーンをさくっと突き刺して
ぐるぐるかき混ぜてくれないか と思わないでもないのだが
大きくなったときに君が自分の心の冷まし方を覚えてくれれば
まずまずよしと思うことにしよう。
自分のじりじりとする照れくささは
はたして君に巡っていくのだろうか。
気持ちを伝えることがうまくなくとも
それなりになんとかなるものかもよ。
言葉もよく分からない相手に勝手にそう言ってみて
自分の中の重なる雲へとストローを挿した気分になる。