父の日
N.K.

父の日は毎年やって来る。
梅雨のこの時期には気分も じめじめとしてしまって
シャツでも送ろうと思っても
淹れたコーヒーをかき混ぜながら
サイズが分からないとひとりごちて
照れくささで熱くなった胸も冷まして
この頃は何も送らずに済ませてしまう。

梅雨のこの時期には毎年のことだが
厚く覆いかぶさる雲を誰もかき混ぜようとはしない。
今年も父の日がやってくることは分かっている。

自分が父親になってこの日を迎えるとは考えたことがなかった。

ぐるりと一掻き
タンブラーの中は知らず知らずに掻き混ぜられていたのだ。

自分が抱いているこの子も自分の腕の中でばたばたと回って
もう父親の腕の中から逃れようとする。
この子には父の日が毎年来ることなんてまだ分からないのに

娘よ、この時期のあの分厚い雲にスプーンをさくっと突き刺して
ぐるぐるかき混ぜてくれないか と思わないでもないのだが
大きくなったときに君が自分の心の冷まし方を覚えてくれれば
まずまずよしと思うことにしよう。
自分のじりじりとする照れくささは
はたして君に巡っていくのだろうか。

気持ちを伝えることがうまくなくとも
それなりになんとかなるものかもよ。
言葉もよく分からない相手に勝手にそう言ってみて 
自分の中の重なる雲へとストローを挿した気分になる。




自由詩 父の日 Copyright N.K. 2008-06-01 21:55:02
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