ちいさな手帖
乱太郎
片手くらいの
かわいい顔した手帖があって
女の子のような
詩がたくさん書き連ねていた
僕には
春の風を思わせる旋律が聞こえ
夏の陽気さを感じる水彩画でもあり
ちいさな言葉たちだが
海原で踊る光の群れにも感じた
手にしたのは
偶然の出会いだった
子猫が銜えていたのを拾ったのだ
まるで
僕に読んで下さいと
はい
読みますよ
書いたのは女性だとすぐにわかった
優しく
穏やかに
きれいに
「わたし」の視線で
公園のベンチで「わたし」と会話して
最後に
もう詩は書かない
これっきり
何があったのだろう
捨てたのだろうか
新しいものを見つけたのだろうか
この二行
最も心に残った詩