思い出してよ
初めての感動を。
君は何からだろう?
僕はアリの行進から。
次々と穴から出て来るアリが
一列になって進んで行く。
通りの道の葉っぱやタンポポの種を小さな身体で持ち上げて
運んで行く。
巣には卵や蛹がいて
大人のアリ達に守られている。
育児室があって倉庫があって菌類を栽培して、
夏には大空へ飛び立つ雄達。
巣別れする雌を求めて
儚い命を燃やす。
明らむ光が見え地上に夜露の垂れる時、
羽を落とし夢を終える。
こんな小さな命に
大きな一生。
あっという間の一生が大きな時の流れの中にある。
日の光が力を持ち始める時、
新しい一日が始まる。
新しい一族の始まり、
それはあたかもひとつの文明のよう、
始まりがあって終わりがある。
長い時間の流れの中で続いていく摂理。
アリの行進にぼくが感動したのは
本当の話だよ。
ねえ、
君の話を聞かせてよ。