真夜中のメロンソーダ
風音
深夜のファミレス
メロンソーダ
人工的なグリーンが
光を集めて
輝いて
私は
自分の席の話題に
ついていけずに
(バイクや車の話ばかりで)
辺りを見渡す
端の席に座っている
女性ふたりは
楽しそうに
知人の噂話をしている
こぼれんばかりの
灰皿を間にして
私は
彼女たちに
聞きたかった
ー今幸せ?と
その向こうに座っている
4人連れの少年達は
退屈を装いながら
何度となく
ドリンクバーに向かう
彼らたちにも
聞きたかった
ー今幸せ?と
深夜に働く
ウェイトレス
ナプキンを揃えて
塩を補充している
彼女にも
聞きたかった
ー今幸せ?と
私は席を立ち
ウェイトレスに近づいた
ー今幸せ?と聞きたかったのに
ーお手洗いはどこですか?
とわかっていることを
わざわざ聞いた
彼女は笑顔で
教えてくれて
私は入らずにはいられなくなった
独りきりになると
何故か涙が出て
止まらなくなった
もう
限界だったから
存分に泣いて
顔をバシャバシャ洗った
誰にも気づかれたくなかったから
ドアを開ける
私のメロンソーダは
まだ燦然と
輝いている