湖月

土のにおい
湿る地を掘りかえし
葉桜の下に約束を

ぬかるみに足を入れ
虫の這う手を雨が流す
汚れても 汚れても
流される季節に
約束すら消えてしまうのかと
深く掘り虫を潰し
緑の影に隠れ
いちまい、にまい、
透きとおる緑の葉を数える

帰りの月はあかく
柔らかい地に足跡は残る
虫の声は響き
汗ばむ首に風をあて
歩行は止まることはない

記憶は近く
約束は果てなく
桜の季節は遠すぎる


自由詩Copyright 湖月 2008-05-30 02:11:37
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