うつわの日
木立 悟
時は飛び 分は飛び
秒はわずか手のひらにある
両肩と指を結ぶ三角
降るものたちを受けとめきれない
かがやきにあふれこぼれるかたち
響き少なに揺れる影
オンドマルトノ
壊れたままの
器の道に奏者は来ない
笛とダルシマー
光と埃
記憶とふちどり
一瞬の晴れ間が水をすぎる
常に双つが干渉する
雲はふたたび曇になる
常に双つが舞っている
音は指に照り返す
昏い緑に覆われる家
音は指に照り返す
嵐の痕に水が満ち
音の上に音の下に
今は失いものを建てている
棄てられた苦さが水草を流れ
午後を見つめる目のなかを去る
あいろ あいろおん
おの位置に膝があるのだろう
あいろ あいろおん
音でできた生きものの
たましいだけが傾いて
またもとの位置へもどるとき
消える星 まばたき 涙のように
双つの鈴のように鳴る
水と螺旋の建てものが崩れ
風はひと息さみしくなる
はざまを震わせ すぎるふるえ
手のひらを指を洗いきり
異なるものへ異なるものへと
はねしぶきかけらつぶしずく
見えない器を手わたしてゆく