ドアの外
aidanico
面白い冗談で笑わせてくれ
出来れば流行の三秒で笑えるレンジなお笑いがいい
シャツに小汚い染みをこれ以上
増やしたくは無いグレイト・ジーニアスを
知っていたらここに電話してくれ
彼は待合室のドアの外でマルボロを吸っていた
私はどうしてもそのドアを開けられなかった
私はどうしてもツモリのストラップ・シューズを履けなかった
私はどうしても彼の横顔を見ることが出来無かった
彼は受付に戻って笑顔でサヨウナラを言った
私はなぜか彼の期待に答えることが出来なかった
私はなぜか笑顔でサヨウナラを言った
私はなぜか一種の現実を受け止められなかった
小降りだった
でも土砂降りだった
今泣いたけれど
もう遅すぎる、もう遅すぎる
私は彼と幾つかのCDの話をした
私は彼と幾つかの本の話をした
私は彼と幾つかのコメディ映画の話をした
「人によって趣味はそれぞれ」
私も彼もその言葉だけは言わなかった
なぜか言わなかった
マーク・ジェイコブズの話をした
関西ではメンズのセカンドラインの販売をされていないと
言うと少しだけ残念そうな調子になって
そのあと直ぐに別の話題の話をした
私は言わなければよかったと思った
私は「行かなければ分からない」といえば良かったと思った
私はマーク・バイ・マークジェイコブズが
ヴィトンやプラダのビルをぶっ壊して
心斎橋にキャンディみたいな、あるいは洗練されたスポーツカーみたいな
ビルを建てれば良いと心から願った
日照りだった
でも通り雨だった
さっき知ったけれど
もう遅すぎた、もう遅すぎた
グレイト・ジーニアスを探してるんだけど
未来に戻らなきゃ見つかんないかな?
浮気男よ、教えておくれ