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服部 剛

Mixiの長方形の空白に 
パスワードの黒点を打ち込んで、 

ログイン。 

「今日のニュース」をクリックすれば 
ベンツの車内で美人のアナウンサーが 
運転席に項垂うなだれたまま 
自ら命を絶っていた 

プロ野球のエリートチームの 
外国人選手は 
薬物使用の疑惑で 
首を斬られた 


  ログイン、ログアウト。 


「今日の日記」をクリックすれば 
友人の隣のデスクの若い女が 
最近亡霊の顔をしているという 

遠い空の下の友人は 
病で動かぬ手足のまま 
辛うじて動く指先で文字を打ち 
「毎日が生き地獄だ」と打ち明ける 


  ログイン、ログアウト。 


それらの出来事を 
入りきらない胸に納め 

今日という日を 
丸めてごみ箱に 
棄てないように 

今日という日を 
値段の無い贈り物として 
この両手で包むように 

僕等は何故か、この地上という幻に 
ログインした。
産声をあげた、あの誕生の日に。 

クリックはいつも、この足元に 

周囲に集まる人々の 
年輪の中心に立つ 
今・という瞬間に、 

ログイン。 








自由詩 「 ログイン 」 Copyright 服部 剛 2008-05-27 21:24:56
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