『近視』
東雲 李葉

二つのレンズを外して見る。
境界なんて空には要らない。
分かってやれよ利口な人。
本当は誰より無知なだけ。


『近視』


二つのレンズを外して見る。
景色は海の底にも似て。
光はぼやけて遠退きながら。
思い出は近く発光する。


天気予報も信号も
確かなものなど何も無いのさ。
ラッシュアワーもバニラアイスも
僕にかかれば同じこと。


二つのレンズに隠れた目は
本当の自分を知らないまま。
悪いことではないはずと
咎めてなくても訳を並べる。


会いたい人の顔さえ知らない。
なのに止まない愛しい耳鳴り。
塞ぐ指には力が入らず
零れる滴に視界が霞む。


二つのレンズが割れてしまった。
景色は海の底にも似て。
はてしなく青い空を見た。
思い出は遠く微笑する。


自由詩 『近視』 Copyright 東雲 李葉 2008-05-26 23:14:37
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