静寂
草野春心
沈黙の果てに
静寂は
ない
世界と
切り離された
闇も光も
届かない場所に
それは
あるだろう
僕が
望むことは
全然多くない
生きることや
死ぬことは
関係ない
ただ
静寂の片隅へ
君と
一緒に
行ってみたい
言葉や……
口をつぐむことは
記憶のように
さまようだろう
心は
かたちだけ
残して
矛盾が
視界の外に
息づく
でもそれは
幻よりずっと
透きとおった思いだと
僕は
知っているから
きまりの悪いかなしみが
存在のいちばん
弱い部分を
深くえぐる
沈黙の果てに
静寂は
ないのだから
僕は
君の
その笑い声を
いつまでも
感じ続けていたい
うるさいほど
感じ続けていたい