風鈴
1486 106

風が鳴らす季節のインターホン
縁側に出てみると夏が立っていました
水で冷やしたスイカを差し出すと
種ごと美味しそうに食べていました

僕が卒業式の悲しいエピソードや
新入社員の苦労話を打ち明けると
夏は早く半袖に着替えなさいと
背中をぽんと叩いてくれました

日差しが暑いし汗をかくのが嫌だと
苦情が多くて大変みたいだけど
寒がりな僕は冬よりも好きだと答えると
夏は照れ臭そうに笑っていました

庭先で揺れる向日葵や
高くそびえ立つ入道雲や
遠くで鳴いているセミも
優しく夏を励ましていました

和室で少し横になっていると
いつの間にか夏は帰ってしまいました
来年は海へ行きましょう
それまでここで待っています


自由詩 風鈴 Copyright 1486 106 2008-05-25 08:32:53
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