とちかん
Hitotsuyanenoshita




帰っていく
町のともしびが
冷たくなって
帰っていく

月の出ない晩
朝まで
何の鳥を鳴かせよう
誰かがきた
また遠のく町に寄せる
手紙と同じ重さの波
海が近い
花束は
いらない

帰るときには
何のためらいもなく
たどたどしさも捨てて
冷たさの余韻に
包まれていく町とその終焉


波のざわめきも
今夜は月を呼べない






自由詩 とちかん Copyright Hitotsuyanenoshita 2008-05-24 22:26:59
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