ダッチとアンゴ
udegeuneru
都会はいつも決まってドブ臭くて渦巻いていた
歓楽街の路地裏にある一軒のバー
いつの時代もこういう場所には需要がある
男はいつもと同じようにカウンターの席に座っていた
俺はまっすぐカウンターに向かいそいつの横の席に腰をかけた
いつもと同じ酒を頼み同じ煙草を吸っていたそいつを気にかけない様子で
「マスター、ホワイトロシアン」
「珍しいですね」
「たまにはね、こういうのが飲みたいの」
「・・・」
「やあ、あんたいっつもその服を着ているんだな」
「同じのを7着持ってる」
「たまには違う酒を頼みなよ、おごるぜ」
「いや、いい」
「気分転換になるよ」
「いいんだ」
「なぜ?」
「気分を変える必要がないからな」
カウンターの上に白黒ツートンのグラスが差し出された
「いつも同じだと飽きないか?」
「心がけているんだ」
「どういうこと?」
「川の流れは絶えず同じように見えるが、一度として同じ水は流れない」
「俺は毎日同じ女とヤってると、もうウンザリしてくるがね」
「別に説教しようってわけじゃない」
「なあ、あんたいったい何をしてるんだ?」
「俺はいつか爆発する時を待っているんだ」
「爆発?そんなものあるのか」
「ああ、いつか必ずやってくる」
「・・・」
「・・・」
「いや、本当のことを言うと分からない」
「くるかも分からないようなものを待っている?」
「だが、いつか必ずその瞬間はやってくる気がするんだ」
「おれにも?」
「おまえにもだ」
男はグラスに残った2センチのウイスキーを飲み干した
照明を反射して眩しい腕時計がゴツすぎて似合っていなかった
「ごちそうさま」
「もう行くのか?」
「・・・」
「今度おごらせろよ」
男はスン、と鼻で少し笑い
街の中に消えていった
俺はストローでカルーアとウォッカの部分を一口飲みその後
生クリームをかき混ぜ一気に飲んだ
「甘ったるい。ビールくれ」
ここは街のどこかにある、路地裏のバーだ
俺達はウサギだった