かすれたフルート
氷水蒸流

紫煙の記憶が折り重なる木枠 
スピーカーに雑草が繁茂する
煤けた天井から黒い茎が垂れ
席のすぐ上で円錐の花が開く
ここは暖色の蜜であふれている
白い蜜に沈む 緑の無邪気な囚人たちは
小さな体をはためかせ
刑期の延長を申告している
それは時々、風の音と間違われた
頑固な重力と相談しながら
獰猛な安売りポップを振り払い
捨てられたHOPEの角を曲がる
とそこにある
磨かれたガラスは
ここからは見えない

レタスを切る手を止め
裁判官は形式的に
罪状を石段に置いた
「いつものやつを」
すると季節のように息をひそめ
夏が来て
コトン
と置かれたカップに
入道雲が浮かんでいる


自由詩 かすれたフルート Copyright 氷水蒸流 2008-05-23 18:46:51
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