かすれたフルート
氷水蒸流
紫煙の記憶が折り重なる木枠
スピーカーに雑草が繁茂する
煤けた天井から黒い茎が垂れ
席のすぐ上で円錐の花が開く
ここは暖色の蜜であふれている
白い蜜に沈む 緑の無邪気な囚人たちは
小さな体をはためかせ
刑期の延長を申告している
それは時々、風の音と間違われた
頑固な重力と相談しながら
獰猛な安売りポップを振り払い
捨てられたHOPEの角を曲がる
とそこにある
磨かれたガラスは
ここからは見えない
レタスを切る手を止め
裁判官は形式的に
罪状を石段に置いた
「いつものやつを」
すると季節のように息をひそめ
夏が来て
コトン
と置かれたカップに
入道雲が浮かんでいる