五月の鷹
石瀬琳々

夜のドレープに裂け目が入る
夜明けが裾にそっとくちづけると
私はすべてを脱ぎ捨て
一羽の鷹になって飛んでゆく
まとわりつく冷気を翼で切りながら
あなたを求めて飛んでゆく


   私はこの目であなたを見透かす事ができる
   あなたのもとへ飛んでゆく事も
   あなたを追う事もできる


私のガウェインよ
まだ眠っているだろうか
霧に包まれたまどろみの中に
まるで眼下に広がる森のようだ
私はその鼓動を知っている
湿ったやわらかな静脈の手触りを
今まさにこぼれ落ちようとする吐息を


   私はこの爪であなたを切り裂く事ができる
   あなたの胸にじっと留まる事も
   あなたを待つ事もできる


誠実なガウェインよ
その夢に私はいるだろうか
ひとときの花に漂う心と知りながら
私をとらえてはなさない蜜だ
ちょうど深い湖に影が映るように
いつまでも旋回してやまない夢だ
あるいはこうして草原を飛んでゆくように


   私はこの声であなたを呼び覚ます事ができる
   あなたの耳に届くようにただ一度
   そのひと声を今啼こう


夢の中の夢で重なる事があるだろうか
あなたの時と私の時
ガウェインよ
その時は翼を広げて飛んでゆこう
夜のドレープが消え入る前に
まだ青い地平線の彼方へ



自由詩 五月の鷹 Copyright 石瀬琳々 2008-05-20 13:54:57
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十二か月の詩集