ひとつ つながり
木立 悟
糸の光が
階段をのぼりきり
壁にもたれて息をしている
痛まない傷が増えてゆく
気づかないまま
熱が流れ落ちてゆく
水に立つ片足
からだをすぎる火の粉の
ひとつひとつが空になり
近くやわらかく降りつもる
何も持たない青のなか
静けさも叫びも途切れない
土の下で目を見ひらくものが
空と季節の楔を赦さず
見ひらいては見ひらいては燃している
元の名前 別の名前
壁と壁のあいだにひらき
今の名前には戻らない
道の上の蝶
土と炎を見つめる蝶
ただ静かにそこに居るだけで
あなたはずっとあなたでした
誰にでもできることばかりをし
ときおりそのまま眠ってしまい
目ざめてはまたくりかえし
あなたはあなたでいるのでした
炎の音を浴びすぎて
少し痺れた舌先に
夜は夜のまま落ちる
水の音 土の音
痛みなく 熱のある
みずみずしい傷のむらさき
不思議なつながりがひとつ消え
皆それぞれに離れて唱う
たくさんの息つぎが
光の去ったあともかがやき
降る空のなかを昇りつづける