ふりだし
アンテ


流しのしたで無事見つけた
ゴミ袋は
みるみる膨らんで
いくつも部屋のすみに並んでいく
たちまち汗びっしょりになる
シャワーを浴びたい
冷たいお茶を飲みたい
などと考えないよう
片時も休まずに手を動かす
大切だと思うもの
から順に詰め込んでいく
のがコツなのだそうだ
テーブルのうえ
玄関まわり
寝室
本当に大切なもの
に手が触れたりするはずがない
押入れはゴミの宝庫だ
台所は簡単かんたん
物置小屋には
びっくりするくらいものが溜まっている
ひなたぼっこを兼ねて
いそいそとゴミ袋に詰めるうち
それでも
ひとつふたつ
生き残った精鋭部隊たちが
組み合わさって
とても明確に
この先に待っていることを教えてくれる
わたしは本当に
それを望んでいるのだろうか
わからない
なんとかひと通り
やり終えたので
縁側でひと息つきながら
さっきから邪魔でしかたがなかった
ポケットの中身をさぐると
次から次へと
身覚えのあるものが転がり出て
それはそれは
尋常ではない量で
そういえばあれもこれも
どこにも見かけないと思っていた
ものばかりで
たちまち
あたり一面を埋めつくして
足の踏み場もない
やれやれ
ふりだしに戻りましたとさ
おかしくて
まずシャワーを浴びて
よく冷えたお茶を飲もう
どれだけ探しても
お気に入りのタオルもカップも
見あたらない
陽が西に傾いて
物置小屋の影が庭に落ちている




自由詩 ふりだし Copyright アンテ 2008-05-20 01:23:29
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