ビオレータ
山崎 風雅

 言葉が時代の上空を走っていく
 夜も昼も黒も白も
 ハイソもセイホも
 自民も民主も越えて

 想いがやせ衰えて行く
 かぼそい真実が怯えている
 見過ごすのか生贄か
 選択を洗濯に変換する感性
 

 おい


 日本の現実
 日本人である真実
 
 それさえ無視しても笑える不誠実
 あるいはたくましさ
 あるいは精神異常
 
 あるいは

 
 ソフトボール大会に出た
 当たり前に2打席2ベース
 キャッチャーやった
 当たり前にピンチでファインプレー
 なのに
 なにもうれしくない
 別にヒーローなんかになりたくない
 
 中国で瓦礫の下で
 飯も食えず
 洩らして
 暗闇で
 く


 あ
 

 あ


 江戸時代の10万倍の情報に囲まれた俺達
 苦しみは快楽に変わり
 心までバーチャル
 染み渡る傷みさえ
 長澤まさみの笑顔で麻痺する

 模索続ける頭脳は
 舞鶴で土に埋められるし
 真実を語ると
 みのもんたには敵わないし
 友達からは映画靖国を観て来たとメールが来るし
 とりあえず、阪神は勝ってるし
 言葉が言葉を犯すし
 歩いて3分のローソンのオヤジは仕事の愚痴を言わないと不機嫌になりやがるし
 父親の居所は不明のままだし
 彼女は水子の霊とやらで背中が痛いらしいし
 
 
 後輩と西成で一泊1200円
 フィリピーナのビオレータが酒を出す店で
 何故かジャネット・ジャクソンのライブビデオ
 その夜はビールを2リッター空けたのに酔いもしない
 翌朝、新今宮から京橋までの10キロ程を何故か歩きたくなって
 露骨にイヤな顔をする後輩連れて
 片手に携帯のナビ見ながら
 サラリーマン並行移動の難波を越えて
 獲物逃したホスト点在のひっかけ橋越えて
 中央区役所前まで強がったけど
 さすがに泣き入れて
 後輩にわび入れて
 地下鉄堺筋線
 片町鶴見緑地線に乗り換えて
 京橋まで出て
 コムズガーデンの階段で座り込んで一服してたら
 警備員にここは通行人の邪魔になるので
 東野田公園は桜幼稚園の横
 まだ、午前9時
 ゲートボールする老人が放つ大き過ぎるクラブの音と
 目の前を通り過ぎる自転車に乗せられた黄色い帽子
 手を振る男の子には罪はないので
 右手のぐうを煙草をくわえながらかざして
 五月の水色にかざして


 ビオレータにぼったくられて今月も金欠








 


自由詩 ビオレータ Copyright 山崎 風雅 2008-05-18 01:48:31
notebook Home 戻る