埋める火の熾き
pur/cran

梁にしがみつく蝶を引き剥がすたび
親指と人を指す指が情けなく震える
コロシヤシナイカと懼れながら
ただ善意を偽って助けようとして
羽を掴む、その度に
燐粉が指先に着いてしまい
その後でゴシゴシと水で洗う
否、ハンドソープで洗う
燐粉がとれなくてとれなくて
なぜそんなに厭なのに助けようとしたのか
分からなくなる

子供のころに
蟻を踏み潰さないために下を向いて歩いた
なぜ他のいろいろな物を殺さない努力もしないで
蟻を潰さないことを心がけていたのか
そんなことも分からない

もう少し年を重ねてからは善行を積もうとした
一度でも悪行を犯した者に過大な責を負わせることには
欠片も触れなかった
理不尽なことも分からないまま

いまでは自分に不都合なことは
すべていらないように感じられてしまうので
多くのことを見殺しにしている
存在の意義も分からない

そして
「おお、こわいこわい」
と言ってテレビのニュースを見ている


自由詩 埋める火の熾き Copyright pur/cran 2008-05-17 21:44:24
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