過渡期
木屋 亞万

朝日が崩壊した港で
人類を魅了していた
光の筋は届かなかった
万能の魔法は無能になり
知恵の実は腐臭を放つ

太陽がひしゃげて
穴から血が噴き出した
火山の噴火だと気付いた
空からは赤黒い血の雨
窓が幾つも汚れた

時計は意味を失った
時が流れているのを
感じさせる要素がない
赤い陽光は大地から
見上げれば恒常の曇り空

砂漠のように季節のない
灼熱か絶対零度だった
紙の灰が風に遊ばれ
目の前に横たわる服は
骨と分離し始める

死んだように眠っていた
老人が液晶を覗き込み
春が終わったと漏らした
種の袋を持ち立ち上がる

 蒔かぬ種は生えぬ
 人が動かねば時は動かぬ

横たわる骨の眼孔に
手向けられた野ばら

 もう少し生きてりゃ良かった

老人の背を見送りながら
声にできない思念を
骨と白い5弁花に贈る

絶望するには早過ぎた


自由詩 過渡期 Copyright 木屋 亞万 2008-05-17 16:28:07
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