コインロッカー
亜樹

300円で借りられるコインロッカーの中に
入るだけ心を押し込んで
しっかりと鍵をかけたまま
私は逃げた

 一日目には300円
 二日目には3000円
 三日目には10000円……

月日が経つごとに量が増して
内側からドアを叩く音が
随分とやかましかった
私はずっと耳をふさいでる

 そこは寒いかも知れないけれど
 そこは暗いかも知れないけれど
 それでも外よかましだろう?

あれからもう20年
狭い小さな箱の中で
肥大しきった冷たいかたまりを
引き取るための料金を
私はもっていなかった

 駅前の一番奥にあるロッカー
 上から2番目右から3番目
 途方もない値段の鍵をつけられて
 私の心は死んでいます


自由詩 コインロッカー Copyright 亜樹 2008-05-16 22:13:10
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