山の麓の沼
sekka

山でもない 谷でもない
山の麓の沼で溺れていた

あの山の頂上に行く予定なんだと叫びながら
手足をもがいていた
蛙はゲラゲラと笑ってた

助けようとしてくれる人たちもいた
その沼は底なしだ 水も汚い
あの山の頂上を目指すのをやめるなら
今すぐ助けてあげよう
とその人は言った

私は水を飲み込み 涙を流して
あの山の頂上を目指していたの
あの山の頂上から自分が辿って来た
長い長い道のりを見下ろして
そして空を眺めたいのだと言った

助けてくれようとしていた人たちは
腕を組んで溺れる私を見つめるばかり
私はあの山の頂上に行くことを諦められず
手足をもがいていた

山でもない 谷でもない
山の麓の沼で溺れていた

蛙はゲラゲラと笑ってた





自由詩 山の麓の沼 Copyright sekka 2008-05-13 23:18:31
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