海と黄昏
銀猫

響いているのは雨音
夜が深くなると
それはいつか
遠い海に似てさざめき
わたしは
波に洗われたひとつの貝を思う

ところどころが欠けた貝殻は
すこしの闇を内包しており
誕生からずっと聴いていた、
海の声を忘れ始めている

   
   青。
   砂に濁り
   ちぎれた海草が漂う
   
   砕けた貝殻が
   無数に沈んで
   戯れに足を切る
   
   はじまり、ではなく
   むしろ
   海岸線は黄昏と
   小さなむくろで満ちている


たぶん
真夏のきんいろは
幻なのだ

海水を
手に掬えば砂混じり
遠い水平線、
しずかに青




自由詩 海と黄昏 Copyright 銀猫 2008-05-11 01:43:36
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