夜想曲( reverse )
たりぽん(大理 奔)
(カワセミ!カワセミ!)
木々の重なりの一番深く
真っ暗な沢の灌木で小さな光を見つける
ポストの底に忘れ去られた手紙のように
思い出せないのに忘れられない
ちいさな鳥の形を
手のひらでまねて
そう、みんな散ってしまった
雑木林に葉擦れの足音が遠ざかり
薄い暗闇の小枝にさがす
ぬくもり、ぬくもり
(ペルセイス!ペルセイス!)
私の小指だって中指だって
すり抜けてしまう、風が
雑木林を驚かし
いつか失ったもののように
鳥たちは光る目を、星にばらまく
みんな、みんないってしまった
鳶色の美しい鳥を
いつまでも見つめていたかった
根のようにからめようとする枝々も
自由なかたちを虜にはできない
黒髪が星座を憶えないように
夜、光る目の鳥たちが
夢の雑木林でささやく
いつか去ってしまうと知っている
ここを去らねばならないと
鳥たちが、目を光らせる
根のように記憶をからめて
黒髪のように星宿をからめて