紫陽花を待つ
しろう


海岸で拾われてきた貝殻みたいに
居場所を少し間違えただけ
それがあるべきところから
遠く離れてしまうよう

「そう、まるで午後の雨のようね。」
と、あなたはつぶやいた
空の天井を落とす灰色雲の、
見下ろす理由の青い花弁


この尖った指先が痺れているのは、
動きをやめたいからじゃなく
季節の中でほんの少しだけ、
まぶしさの破片が足りないのだろう

音も立てずに落ちる春雨の雫に
ひとつだけ手向けの花を想う
赤いカーネーションじゃなく

紫陽花が咲いたら、
あなたに贈ろう







自由詩 紫陽花を待つ Copyright しろう 2008-05-10 18:51:47
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