さよならを
REMINGSセシル

言わなくていいんだと
きみはぼくを細くなった手で
握りました

体も細く縮んで
手はしわしわでした

きっと生まれ変わるので
きっと心は生き続けるので
さよならじゃあ
ないんだよ
と言いました

だから
ぼくたちは
またクラスメイトの
いしい君のことで
笑っていました

病室は
いつもどうり朝でした
外には霧雨が降っていました





思い出すきみは
強くまっすぐでした

冬はいつまでも
あの頃のままでした

凍るように冷たいアスファルトに
きみは
スズメの死骸を
手に持って

何度も大丈夫だと言いました

きみがまだ元気で
ぴんぴんしてたとき

ふたりで
木の根元に埋めました

12月の日曜日の
静かに小雨の降る午前10時でした

寒い冬の濡れたアスファルトが
ぼくたちだけを見てた

土は固いし
かじかんだ手が
赤くて痛かったな


あのあとほんの1、2ヶ月経った
くらいだったね




きみの心は生き続けているでしょうか
きみはちゃんと生まれ変わったんでしょうか




ぼくは何度も冬をこして27才
きみはぼくを残したまま12才




いや

たまたま
冷房をかけたまま
眠ってしまって
冬みたいに寒くて
目が覚めたものですから


自由詩 さよならを Copyright REMINGSセシル 2008-05-10 14:38:07
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