盆地
小川 葉
盆地を走る列車に乗って
窓から景色を眺めると
かつて僕の世界には
奥行きと幅
高さだけがあったのだ
あの山の並々に
目指す高さがあったのだ
今はその山の向こうの
知らない海が
見える街で暮らしてる
起伏に富んだ少年の
盆地のような奥行きと
幅と高さがあったのだ
懐かしい
盆地を走る列車から
見える空は空なのに
今は少し違ってる
高さがあるだけ限られた
かつての世界の向こうには
知らない海が見える街
その街でもうひとり
生まれた僕には
あたらしい
奥行きと幅と高さがある
たどりついたはじめての
暮らす僕の人生に
向かって盆地はひたはしる