盆地
小川 葉

盆地を走る列車に乗って
窓から景色を眺めると
かつて僕の世界には
奥行きと幅
高さだけがあったのだ

あの山の並々に
目指す高さがあったのだ

今はその山の向こうの
知らない海が
見える街で暮らしてる

起伏に富んだ少年の
盆地のような奥行きと
幅と高さがあったのだ

懐かしい
盆地を走る列車から
見える空は空なのに
今は少し違ってる

高さがあるだけ限られた
かつての世界の向こうには
知らない海が見える街

その街でもうひとり
生まれた僕には
あたらしい
奥行きと幅と高さがある

たどりついたはじめての
暮らす僕の人生に
向かって盆地はひたはしる


自由詩 盆地 Copyright 小川 葉 2008-05-10 00:57:15
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