天国へ還りましょう
AKiHiCo

私はアナタの自尊心を護る人形じゃないわ
ちゃんと心臓があるのだから

ねぇ、どうして変わってしまったの、
あんなに一緒だったのに
私を狭い部屋に閉じ込めて
どうするつもりなの

――床に転がる一つの果実
――ルビィの如く煌いて艶めいて
<口に含めばどんな味がするの、>
腕を伸ばすのを制するように
銃声がどこか近くで響く
「天国へ還りましょう」

アナタと過ごした日々を否定しないで
最初からもう一度幸福を探しましょうよ
アナタと私なら出来るはずなのよ
信じているわ信じているわ信じさせて
ドア越しに聞こえる物音に身体を縮めながら
決心を何とか怯えながら付けたわ
「一緒に還りましょう」

ドアをそっと開くのはアナタだけ
ここはアナタの楽園よ
それでいいわ
けれど其れは長くは続かないの
薄々判っているんでしょう
表では賢明な紳士、果たしてその正体は

床に転がった果実を手に取り微笑むの
知らぬ振りでいるから涙は流さない
アナタは満足そうに微苦笑して
私の頭を優しくゆっくり撫でて瞼を閉じた

――甘い果実は毒の味
――蘇る幸せだった日々
これが私の愛の烙印よ
しっかり見届けていてね
「ねぇ、私を抱きかかえてくれてるの……」
昔を思い出すわね――
唇だけが微かに動くだけで

床に転がった果実
それを見つめるアナタが手に取る
その瞬間に
私は弾けてしまったの


自由詩 天国へ還りましょう Copyright AKiHiCo 2008-05-09 02:01:48
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