風 船
beebee



それは初夏のある晴れた日の夕暮れのこと。ふと見上
げた空に、解き放たれた赤い風船が一つ、橙色の風に
吹かれて、揺れているのが見えた。


《 風の中を飛んで行った、風船は、
        あれは、なんだったのだろう。 》


あれは幼い日の、晩秋の夕暮れにこと。学校帰りの公
園の、遊び疲れて掴まった、冷たく錆びた緑色鉄管の
手摺に、危なっかしく結わえられていた赤い風船。


《 青い闇の中に消えていった、風船は、
       あれは、なんだったのだろう。 》


夕日が沈み、幽かに残っていた残照も消えて、空には
冷たい藍色の風が吹き渡っていった。その時、解き放
たれた赤い風船が一つ、夜空に吸い込まれてゆくのが
見えた。



自由詩 風 船 Copyright beebee 2008-05-09 01:50:03
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
散文詩