もう誰のものでもない
ブライアン

世界を足し算した同級生に子供が生まれた。
空という名前をつけた長男に対して、海という名前をもらえなかった次男

<今だって世界を足し算しているはずなのに>

空の果ての果てまで行くには、
飛行機では届かないよ、
と、次男の足音が追いかけてくる。

<次男が鳴らす足音は、世界の重力のためだった>

空は、浮いている飛行船を見て、
空の果てまでいけそうだ、
と、同じ事を繰り返している。

<繰り返された世界は足し算を続ける>

 小学生の頃、握り締めたままになった架空のゴムは、
 今だって、握り締めたままだ。

どうしたらいい?
と、空は父にたずねる
<それは果てへ行くための方法だろうか>

誰にだって、我ままな時代はある、
と、心理学者は椅子の背にもたれる。
それはそうと、
彼らの我ままを許しているのは何のためだったのだろう。

空が沈む
もう誰のものでもない

灯りが消える。
世界の足し算は見えなくなる。

<ここが世界の果てなのだろうか>

世界に共鳴する赤ん坊の泣き声。
我ままな時代は誰にだってある、
と、同級生は目を閉じるだろう。



自由詩 もう誰のものでもない Copyright ブライアン 2008-05-08 23:55:24
notebook Home 戻る